
概要
Googleが2025年に発表した科学研究専用のAI「AI co-scientist」が、細菌の薬剤耐性に関する複雑な問題にわずか2日で解を導き出し、SNSでも大きな話題に。英・インペリアル・カレッジの研究チームが10年かけて積み上げた研究とAIによる成果が、今後の生命科学や医学研究に新たな可能性をもたらすとして注目されている。
10年がかりの難問に“AIが2日で到達”
インペリアル・カレッジ・ロンドンで微生物学教授を務めるホセ・ペナデス氏らの研究チームは、薬剤耐性菌の拡大に関わる「cf-PICIs(カプシド形成ファージ誘導性染色体島)」の感染メカニズムを長年にわたり解明しようとしていた。この難問に対してGoogleの「AI co-scientist」は、研究チームが10年をかけてたどり着いた答えと同じ仮説にわずか2日で到達したという。
「我々の発見を一切伝えていなかったにも関わらず、AIは本質を見抜いた。まさに“共著者”と呼ぶにふさわしい存在です」
― ホセ・ペナデス教授(Imperial College London)
薬剤耐性菌とは何か、その世界的な脅威
薬剤耐性とは、感染症の原因となる細菌やウイルスが複数の抗生物質に対して効果を示さなくなる現象を指す。これにより治療が困難になり、世界的な公衆衛生上の脅威となっている。
アメリカ・ワシントン大学を中心とする研究では、2050年までに薬剤耐性菌による死者が年間3900万人を超えると予測されており、今後の感染症対策の鍵を握る分野とされている。
cf-PICIsが示した“種を越える感染”の仕組み
cf-PICIsとは、特定のファージ(ウイルス)と連携して細菌に感染する移動性遺伝要素の一種。研究チームの発見によると、cf-PICIsは通常のファージと異なり、自らの尾部を持たないカプシドを放出し、他のファージの尾部と相互作用することで異種の細菌へ感染する能力を持つ。
“AI共同研究者”時代の幕開け
AI co-scientistは、Googleの次世代AIモデル「Gemini 2.0」をベースにした科学研究支援専用のシステム。論文やプレプリント、背景知識などのデータをもとに、高速かつ論理的に仮説を生成し、実験的思考に似たプロセスで問題解決を行う。
インペリアル・カレッジが発表したニュースによれば、AI co-scientistは将来的に研究チームの中核メンバーとしての役割も担う可能性があるという。
文=WEBOPI(翻訳|構成|編集)