アメリカの高校生、AIを駆使して150万の天体を発見 賞金3500万円を獲得
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アメリカの高校生、マッテオ・パズ氏(18)が、NASAの赤外線探査機「NEOWISE」の2000億行にも及ぶ天文データをAIで解析し、150万件以上の未発見天体候補を特定。この成果により、全米屈指の科学コンテスト「Regeneron Science Talent Search 2025」で最優秀賞と25万ドル(約3500万円)の賞金を受賞した。彼の歩みは、科学的好奇心から始まり、数学とAIを駆使して宇宙の未知を切り拓いた若き才能の物語である。

きっかけは小学生時代の星空観察

パズ氏が天文学に興味を持ったのは、小学生の頃に母と訪れたカリフォルニア工科大学の公開天体観測イベントだった。その後、STEM教育に力を入れる地元パサデナ高校に進学し、Caltech主催の高校生向け天文学プログラム「Planet Finder Academy」に参加。これが後のAI研究の原点となった。

「人間の目」から「機械の目」へ──データの山に挑む

当初はCaltechの天文学者カークパトリック氏の指導のもと、NEOWISEが観測したデータの一部から変光星を探す課題に取り組んでいたパズ氏。だが2000億行にも及ぶ膨大なデータにAIの可能性を見出し、独自に機械学習モデル「VARnet」を構築。自ら学んだ天文学・信号処理・数学を統合し、天体の微妙な明るさの変化を正確に捉えるアルゴリズムを完成させた。

52マイクロ秒で処理、150万の“見えない宇宙”を発見

VARnetは1天体あたり平均52マイクロ秒という超高速処理を実現し、既知天体を用いた検証では極めて高精度な分類を達成。NEOWISEの全データを解析し、既存カタログにない変光星や超大質量ブラックホール、形成初期の星、超新星など約150万件の未確認天体候補を発見した。論文は天文学専門誌に単著で掲載され、科学的貢献が評価された。

科学を越えた応用と未来への一歩

パズ氏はVARnetの応用可能性について、「天文学にとどまらず、株価チャートの周期解析や気象データの分析にも応用できる」と語る。彼は高校卒業までCaltechでデータ処理の実務にも従事しており、スタンフォード大学進学後もAIと宇宙物理の融合研究を続ける予定だ。指導者カークパトリック氏は「誰かの可能性を引き出せたことが何よりうれしい」と語り、彼の未来に期待を寄せている。

A Submillisecond Fourier and Wavelet-based Model to Extract Variable Candidates from the NEOWISE Single-exposure Database - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ad7fe6
Regeneron Science Talent Search 2025 Awards More Than $1.8 Million to High School Seniors for Innovative Research on Classifying Celestial Objects, Treating a Rare Muscle Disease and Solving a Long-Standing Math Problem - Society for Science
https://www.societyforscience.org/press-release/regeneron-sts-top-awards-2025/
Teen Wins $250K for Using AI to Discover 1.5 Million Hidden Objects in Space
https://scitechdaily.com/teen-wins-250k-for-using-ai-to-discover-1-5-million-hidden-objects-in-space/

文=WEBOPI(翻訳・編集)


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