タコの『色変化』、人間の25分ランニングと同じカロリーを消費する事が判明
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タコが瞬時に体の色を変えられることは広く知られていますが、その色変化にはどれほどのエネルギーが必要なのか、これまで詳しく研究されてきませんでした。しかし、最新の研究により、タコが色を変える際に消費するエネルギー量が、人間が30分間ジョギングするのと同じくらいであることが明らかになりました。

タコの驚異的なカモフラージュ能力

タコは擬態の達人であり、捕食者を驚かせたり獲物から身を隠すために瞬時に体色を変えます。しかし、これがどれほどのエネルギーを必要とするのかは、長らく謎のままでした。

ワラワラ大学(米ワシントン州)の海洋生物学者カート・オンサンク博士らの研究チームは、今回初めてタコが色を変える際のエネルギー消費量を測定しました。「すべての動物の適応には利点とコストが伴います。タコの色変化の利点についてはよく知られていますが、そのコストについてはほとんどわかっていませんでした」とオンサンク博士は述べています。

色変化のメカニズム

タコを含む頭足類は「クロマトフォア」と呼ばれる特別な色素細胞を皮膚に持っています。これらの細胞は小さな伸縮性の袋状の色素を含み、筋肉によって制御されています。

「クロマトフォアの筋肉が弛緩すると色素袋は収縮し、ほとんど見えなくなります。一方で筋肉が収縮すると、色素袋が広がり、皮膚の表面に色が現れます」とオンサンク博士は説明します。

タコの皮膚には1平方ミリメートルあたり230個のクロマトフォアが存在しており、これは13インチの4Kディスプレイが持つ180ピクセル/平方ミリメートルを上回る密度です。これらの色素細胞を神経系で精密に制御することで、タコは高度なカモフラージュを実現しているのです。

エネルギー消費の測定

研究チームは17匹のルビーオクトパス(Octopus rubescens)から皮膚サンプルを採取し、クロマトフォアの収縮・拡張時の酸素消費量を測定しました。その結果、タコが色を完全に変化させる際に消費するエネルギーは、タコが安静時に行うすべての生理機能に必要なエネルギー量とほぼ同等であることが判明しました。

さらに、計算を人間の皮膚表面積に換算すると、仮に人間がタコのように色を変えられるとした場合、1日で約390キロカロリーを消費することになります。これは約23分間のランニングに相当します。

他の動物との比較

タコやイカ以外にも、カメレオンや一部の両生類、爬虫類、魚類、昆虫なども体色を変化させる能力を持っています。しかし、これらの動物の多くはホルモンを介して色を調整するため、変化には時間がかかります。一方で、タコは神経制御により瞬時に色を変えられるため、より多くのエネルギーを消費すると考えられます。

今後の展望

研究チームは、今後さらに異なる種類の頭足類や深海に生息するタコのエネルギー消費についても調査し、タコの生態や進化の適応戦略をより詳しく解明する予定です。

今回の研究は、タコの驚異的なカモフラージュ能力がいかにエネルギー集約的であるかを示すものであり、海洋生物学における新たな知見を提供しました。


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