
ウクライナの鉱物資源が、世界のエネルギー転換と地政学の中心に浮上しています。米国は、ウクライナの豊富なリチウムやレアアースなどの資源確保を目指し、協議を進めています。
ウクライナには、EUが「エネルギー安全保障に不可欠」とする34種類の重要鉱物のうち22種類が埋蔵されています。特に、電気自動車(EV)、風力・太陽光発電、エネルギー貯蔵システムの製造に不可欠なリチウム、マンガン、チタン、レアアース などの豊富な埋蔵量を誇ります。
しかし、ロシアとの戦争による鉱業インフラの破壊や占領地域の拡大が、資源開発の妨げとなっています。安定が回復すれば、ウクライナはクリーンエネルギー革命の主導国 となる可能性を秘めています。
What’s so special about Ukraine’s minerals? A geologist explains
https://theconversation.com/whats-so-special-about-ukraines-minerals-a-geologist-explains-251551
ウクライナの鉱物資源が持つ戦略的価値
ウクライナは「ウクライナ・シールド」と呼ばれる約25億年前に形成された大規模な結晶質岩層を持ち、世界有数の鉱物資源地帯となっています。
- リチウム:EVバッテリーに不可欠で、世界的な需要が急増。ウクライナには3大リチウム鉱床(シェフチェンキウシケ、ポロヒウシケ、スタンクヴァツケ)があり、特にポロヒウシケは欧州でも最も有望な鉱床の一つとされています。
- マンガン:世界最大級の埋蔵量を誇り、ニコポル盆地に約24億トンが集中。鉄鋼・電池産業に不可欠な資源。
- レアアース:風力発電やスマートフォン、EVモーターに必要なネオジムやジスプロシウムを含む。
- ウラン:欧州最大の埋蔵量を持ち、核エネルギー・防衛分野で重要。
- チタン・ルチル:航空宇宙産業や特殊合金に利用され、ウクライナは世界第3位のルチル生産国。
これらの資源は、エネルギー安全保障とグリーンエネルギー移行の鍵を握る戦略的資産として、国際的に注目されています。
国際的な競争と米国の関心
世界各国が脱炭素社会を目指す中で、ウクライナの鉱物資源を巡る競争が激化しています。EVや再生可能エネルギー技術の拡大により、リチウム価格は1990年代の1,500ドル/トンから現在は20,000ドル/トンに高騰し、2040年までにさらに40倍の需要増が見込まれています。
米国がウクライナの鉱物資源に関心を示す背景には、中国依存の低減があります。現在、世界のリチウム精製の約60%、レアアース加工の約80%を中国が占める ため、米国は安定した供給源を確保する必要に迫られています。
その一環として、ウクライナと米国は、国有資源の将来収益の50%を復興投資基金に充てる提案 を進めています。これにより、ウクライナは資源収益を経済再建に活用しつつ、米国は安定的な鉱物供給を確保できるメリットがあります。
ウクライナの鉱業開発の課題と戦争の影響
ウクライナの鉱物資源の多くは、これまで十分に開発されていません。その主な理由はロシアとの戦争による影響です。
- 占領地域の拡大:ウクライナの鉱床の一部はロシア占領下にあり、開発が困難な状況。
- インフラ破壊:鉱業施設や輸送網が戦争によって損傷し、大規模な復旧が必要。
- 投資リスクの増加:戦争による政治・経済リスクが高まり、外国企業の参入が進みにくい。
特に、リチウム鉱床の開発には1,000万〜2,000万ドルの投資 が必要であり、安定した環境が求められます。戦争終結後に投資が活発化すれば、ウクライナは欧州の重要鉱物供給拠点 となる可能性が高いです。
ウクライナの資源がもたらす未来の可能性
ウクライナの鉱物資源は、戦後復興だけでなく、世界のクリーンエネルギー革命を支える重要な役割を果たす可能性を秘めています。
- EV市場の拡大:2030年までに世界のEV台数は1億2,500万台を超える見込み。ウクライナはリチウム供給の中心となる可能性がある。
- 再生可能エネルギー技術の発展:風力・太陽光発電の拡大に伴い、ウクライナのレアアース供給が鍵を握る。
- 経済回復の推進:鉱業開発による雇用創出、外資誘致、インフラ整備が進めば、戦後のウクライナ経済は大きく成長する可能性がある。
ウクライナが安定を取り戻せば、世界のエネルギー供給チェーンを再構築する中心的な役割 を果たすことになるでしょう。戦後復興とともに、ウクライナの鉱業開発がどのように進展するのか、今後の動向に注目が集まります。
文=WEBOPI(翻訳・編集)