
概要
「適度な飲酒は健康に良い」と長らく信じられてきましたが、その常識が覆されようとしています。
イギリスとアメリカの成人約56万人を対象にした最新の大規模研究により、「たとえ少量の飲酒であっても認知症のリスクを高める可能性がある」との結果が示されました。
この研究では、飲酒量と認知症リスクの関係について精緻な分析が行われ、従来の「適量なら安全」という説に疑問を投げかけています。
Alcohol use and risk of dementia in diverse populations: evidence from cohort, case–control and Mendelian randomisation approaches | BMJ Evidence-Based Medicine
https://ebm.bmj.com/content/early/2025/09/16/bmjebm-2025-113913
There May Be No Safe Amount of Booze When It Comes to Dementia Risk : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/there-may-be-no-safe-amount-of-booze-when-it-comes-to-dementia-risk
世界規模の大規模調査がもたらした新たな視点
この研究は、イギリスとアメリカに住む56〜72歳の成人55万9559人を対象に実施されました。
被験者は自身の飲酒習慣に関するアンケートに答えたのち、最大15年間にわたって健康状態が追跡されました。追跡期間中、1万4540人が認知症を発症し、4万8034人が亡くなっています。大規模かつ長期的なデータにより、飲酒と認知症リスクの関連性が明らかにされました。
一見「適量が最も安全」に見えるU字型の落とし穴
分析の結果、まったく飲酒をしない人と大量に飲酒する人で認知症リスクが高く、「適量の飲酒」で最もリスクが低いというU字型の傾向が見られました。
しかし研究チームは、このU字型のグラフには注意が必要だと指摘しています。飲酒をしない層には、過去の健康問題により飲酒をやめた人が含まれている可能性があり、それが認知症リスクを高めているように見える「バイアス」が存在するのです。
飲酒ゼロと認知症リスクの誤解に注意
飲酒を一切しない人の認知症リスクが高いという過去の研究結果もありましたが、今回の研究ではその解釈に再考を促しています。
完全に飲まない層には、アルコール依存症の既往歴がある人や、肝疾患などの健康上の理由で禁酒している人も含まれるため、結果をそのまま「飲まないと危険」とは受け取れません。
純粋に生涯飲酒経験のない人のデータだけを見れば、リスクはむしろ低い可能性があります。
今後求められる「飲酒習慣」の見直し
この研究は、飲酒が少量であっても脳に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。
これまで「ワイン1杯は体にいい」と言われてきた考え方に対し、今後はより慎重な姿勢が求められるでしょう。健康や認知症予防の観点からも、飲酒の習慣を見直すことが、より安全で確実な選択肢となるかもしれません。
文=WEBOPI(翻訳|構成|編集)

