
概要
アメリカの60歳男性が、健康志向の食生活の一環として塩を完全に排除しようとし、代替物質をAIチャットボットに相談しました。
その結果、AIは「臭化ナトリウム」を代替として提案。男性はこれを摂取し続けたことで精神症状を引き起こし、「隣人に毒殺されかけている」との強い妄想にとらわれ、最終的に入院する事態に至りました。
本件は、AIを医療的判断に用いる危険性を示す象徴的なケースとして注目されています。
Man Hospitalized With Psychiatric Symptoms Following AI Advice : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/man-hospitalized-with-psychiatric-symptoms-following-ai-advice
AI助言から始まった“危険な塩抜き実験”
60歳の男性は健康を強く意識しており、以前から厳しい食事制限を行っていました。大学時代に栄養学を学んでいたこともあり、「塩化ナトリウムを完全に食事から排除する」という独自の実験を開始しました。
しかし、安全性を確認せずにAIに代替物質を質問したことが事態の発端でした。AIから得た回答を信じた男性は、本来食用ではない「臭化ナトリウム」を入手し、日常の食事に取り入れてしまったのです。
臭化ナトリウム摂取がもたらした身体と精神への異変
臭化ナトリウムは医療用途などには存在しますが、食用として安全ではありません。男性が摂取を続けるうちに、身体的な不調だけでなく精神面にも深刻な影響が現れ始めました。
特に顕著だったのが、周囲の人間関係に対する過度な疑念と恐怖感で、「隣人が自分を毒殺しようとしている」という妄想に支配されるようになります。この症状は“臭素中毒(ブロミズム)”の典型例であり、即時の医療介入が必要な状態でした。
家族が異変に気づき、緊急入院へ
男性の様子が日を追うごとに不安定になったことで、家族はただならぬ事態に気づき、医療機関を受診させました。検査の結果、男性の症状は臭化ナトリウムの過剰摂取による中毒と診断され、精神症状の重篤さから入院が決定されました。
治療により血中の臭素濃度が下がるにつれて妄想は軽減し、男性は自身の行動の危険性を認識するようになったと報告されています。
AI依存がはらむ医療リスクと専門家の警鐘
今回の症例は、「AIチャットボットが誤った医療情報を提示する可能性」を世界的に再認識させる出来事となりました。
専門家は、AIは医療資格を持たず、判断材料も限定的であるため、健康に関する助言をそのまま生活に取り入れることは極めて危険だと警告しています。
便利なツールである一方、AIの回答は“あくまで補助的な意見”であり、最終判断は必ず医療の専門家に委ねるべきだと改めて強調されています。
文=WEBOPI(翻訳|構成|編集)
