骨折した足は早めに歩いたほうが治りが早い? 最新研究が示す新常識
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従来、足の骨折後は数週間から数カ月のギプス固定と松葉杖が一般的な治療法とされてきました。

しかし、近年の研究によると、適切な条件下で早期に歩き始めることで、骨の治癒が促進され、生活の質が向上することが分かってきました。

特に足首や大腿骨の骨折において、6週間以上の完全固定は必ずしも必要ではなく、早期荷重が回復を早める可能性があると指摘されています。

これは医療の現場に大きな変革をもたらすかもしれません。

Broken Legs and Ankles Heal Better If You Walk on Them within Weeks
https://www.scientificamerican.com/article/broken-legs-and-ankles-heal-better-if-you-walk-on-them-within-weeks/

 長期間の固定は回復を遅らせる可能性がある

かつては、骨折後は6週間以上体重をかけずに過ごすのが標準的な治療法とされていました。

しかし、長期間の固定によって筋肉量が急激に減少し、回復が遅れることが指摘されています。

ロンドンの整形外科医アレックス・トロンピター医師は、「筋肉は失われるスピードのほうが回復するスピードよりも圧倒的に速い」と述べており、適度な運動が重要であることを強調しています。

これは宇宙飛行士の骨密度の低下にも似ています。

無重力環境に長期間いると、骨密度が10%以上減少するため、宇宙では特殊な運動を行い、骨への負荷を維持する必要があります。

地球上の骨折治療においても、適度な荷重が回復を促す鍵となるのです。

骨は適切な負荷によって強くなる

19世紀のドイツの外科医ユリウス・ヴォルフは、「骨はかかる負荷に適応して変化する」という「ヴォルフの法則」を提唱しました。

この理論は、骨密度を維持するためにウェイトトレーニングが推奨される理由の一つでもあります。最近の研究では、骨折後の回復にもこの法則が当てはまることが分かっています。

例えば、大腿骨(太ももの骨)の骨折に関する研究では、手術後すぐに歩き始めた患者と、6週間待ってから歩いた患者を比較したところ、合併症の発生率に違いは見られませんでした。

それどころか、早期に歩行を開始した患者のほうが、筋力の低下が少なく、回復が早かったと報告されています。

足首の骨折でも早期歩行が有効

特に足首の骨折に関しては、2024年にイギリスの医学誌『ランセット』に掲載された大規模な研究が注目されています。

この研究では、23の医療機関で480人の患者を対象に、手術後2週間で歩き始めたグループと、従来通り6週間待ったグループを比較しました。

その結果、感染症や金属プレートの破損といった合併症の発生率には違いがなく、むしろ早期歩行を行った患者のほうが、6週間後や4カ月後の機能回復が良好だったことが確認されました。

この研究を主導したクリス・ブレザートン医師は、「外科医は安全策を取りたがる傾向があるが、この研究結果が早期荷重の有効性を証明するきっかけになることを期待している」と述べています。

 高齢者の骨折における早期歩行の重要性

骨折の影響が特に深刻なのが高齢者です。股関節を骨折した高齢者の多くは、適切なリハビリが行われないと寝たきりになり、その結果、血栓症や肺機能の低下などの合併症を引き起こしやすくなります。

2005年の研究では、股関節骨折後30日以内に9%の患者が死亡し、1年以内に30%が亡くなっていたことが報告されています。

しかし、最近の研究では、早期に歩行を開始することで死亡率が低下することが明らかになっており、現在では「手術後すぐに歩く」ことが標準的な治療方針になりつつあります。

ロンドンのトロンピター医師も、「今では治療方針は『手術して、すぐに歩かせる』のが当たり前になった」と述べています。

まとめ

近年の研究により、足の骨折治療において「早期に歩き始めること」が回復を早める可能性が高いことが明らかになってきました。

特に足首や大腿骨の骨折では、6週間以上の完全固定を行う必要はなく、適切な条件下で早めに体重をかけることが有効とされています。

もちろん、すべての骨折に対して早期荷重が推奨されるわけではありませんが、従来の「とにかく安静にする」治療方針は見直されつつあります。

もし足の骨折をしてしまった場合は、医師と相談しながら、できるだけ早期に動かすことを検討してみるのも良いかもしれません。


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