
概要
約180万年前、東アフリカのオルドヴァイ渓谷で暮らしていた初期のヒト属・ホモ・ハビリスが、大型ネコ科動物であるヒョウに捕食されていた可能性が、AIを用いた最新の研究で明らかになりました。
解析対象となったのは2体の化石で、それぞれ幼体と成体。化石に刻まれた歯形をAIが高精度に分析した結果、加害動物がヒョウであると特定されました。
この発見は、人類史初期の生態的立場を再考する重要な手がかりとなります。
Early humans and the balance of power: Homo habilis as prey - Vegara‐Riquelme - Annals of the New York Academy of Sciences - Wiley Online Library
https://nyaspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nyas.15321
Rice anthropologist among first to use AI to uncover new clues that early humans were prey, not predators | Rice News | News and Media Relations | Rice University
https://news.rice.edu/news/2025/rice-anthropologist-among-first-use-ai-uncover-new-clues-early-humans-were-prey-not
Leopards ate our ancient human ancestors' faces, AI analysis reveals | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/leopards-ate-our-ancient-human-ancestors-faces-ai-analysis-reveals
初期ヒト属・ホモ・ハビリスの実像に迫る
ホモ・ハビリスは、約240万年前から140万年前にかけてアフリカに存在した初期のヒト属です。長年、彼らは石器を使った最初のヒト属とされ、狩猟や肉食行動の始まりを象徴する存在でした。
しかし近年では、同時期に存在していた他のヒト属との比較により、ホモ・ハビリスが果たした役割に再評価の波が訪れています。今回の研究は、その生態的立場を大きく見直す契機となりました。
歯形をAIが解析、捕食者はヒョウと判明
研究チームは、タンザニアのオルドヴァイ渓谷で発見されたホモ・ハビリスの化石2体を対象に、歯形の詳細な分析を行いました。AIモデルは、さまざまな肉食動物の歯形データを学習しており、化石に刻まれた傷痕の形状や位置を解析。
その結果、歯形はヒョウによるものであると高い確率で判定されました。特に顔の部分に集中していたことから、捕食行動の一環であった可能性が高いと考えられています。
ヒョウに襲われた“狩られるヒト属”の姿
これまでヒト属は、石器を使って狩りを行っていた“捕食者”とされてきました。しかし本研究は、ホモ・ハビリスが実際には大型肉食獣に狙われる“被捕食者”だった可能性を示唆しています。
特にヒョウは夜行性で、木登りに優れていたことから、幼い個体や無防備な状態の個体が狙われやすかったと考えられます。
この視点は、人類の進化過程における生存戦略や行動様式の再検討につながります。
AIが切り開く人類進化研究の新時代
従来の化石分析では、歯形の痕跡から捕食者を特定するのは困難でしたが、AIの導入によりその精度は飛躍的に向上しました。
今回の成果は、初期ヒト属がどの段階で“狩る側”へと転換していったのかを再考する重要な手がかりとなります。
今後も同様の技術を用いた研究が進めば、人類が生態系の中でどのように位置づけられていたのかを、より正確に描き出すことが可能になるでしょう。
文=WEBOPI(翻訳|構成|編集)

