
概要
「身長コンプレックス」を理由に、あえて脚の骨を折って身長を伸ばす“骨延長術”を選ぶ人が世界中で増えています。
かつては医療的な必要性から行われていたこの手術が、美容整形として注目されるようになった背景には、社会的プレッシャーや理想の体型への執着があります。
ブリストル大学の解剖学教授がその仕組みとリスクを詳しく解説しています。
Why some people are purposefully having their legs broken by cosmetic surgeons
https://theconversation.com/why-some-people-are-purposefully-having-their-legs-broken-by-cosmetic-surgeons-265015
身長への執着が手術希望者を増やしている
骨延長術はもともと骨折の治療や先天的な四肢の変形を治すために開発された医療技術です。しかし近年では、特にアメリカやヨーロッパ、韓国、インドなどで「美容目的」でこの手術を受ける人が増えています。
一部のクリニックでは、医療的な必要性よりも美容目的で受ける患者のほうが多くなっているというデータもあり、社会的な“理想の身長”に対する執着がこうした動きを後押ししていると考えられています。
骨を切断して伸ばす驚きのメカニズム
骨延長術では、大腿骨や脛骨を外科的に切断し、その骨の断面をわずかずつ引き離していきます。新たに空いた隙間には骨が再生され、少しずつ骨の長さが伸びるという仕組みです。
以前は体外にフレームを取り付けて調整していましたが、近年では骨の内部に伸縮式のロッドを埋め込む方法も登場し、見た目や感染症リスクの低減が期待されています。ただし、この方法は高額であり、すべての患者に適しているわけではありません。
数センチの伸長に数カ月を要する過酷さ
この手術で期待できる身長の増加は、1回の処置で5〜8cmほど。一部の人は大腿骨と脛骨の両方に手術を行い、合計で最大15cmほどの伸長を目指します。
骨を伸ばす過程は非常にゆっくりで、1日に1mm程度しか延ばせません。その間、筋肉や腱、血管、皮膚、神経なども一緒に伸びていく必要があり、術後のリハビリも含めて長期にわたる治療と強い意志が求められます。
リスクと負担は決して小さくない
骨延長術は、身体への負担が極めて大きい美容整形手術です。骨を引き離すたびに体がそれを修復しなければならず、感染症や骨の非対称な成長、慢性的な痛み、歩行機能の低下といったリスクも存在します。
特に外科手術による合併症や心理的ストレスを軽視することはできず、美容的な動機であっても慎重な判断が必要です。
文=WEBOPI(翻訳|構成|編集)

