お酒が腸内細菌に“武器”を与える?新研究が明らかにした肝臓への悪循環
Unsplash

概要
カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが行った最新研究で、慢性的なアルコール摂取が腸内細菌を通じて肝臓を攻撃する悪循環を引き起こすことが明らかになりました。

アルコールによる肝臓疾患は世界的な課題であり、その仕組みの一端が解明されたことで、新しい治療法への道が開ける可能性が示されています。

アルコールと腸内細菌の危険な連鎖

これまでにもアルコールの過剰摂取が肝臓に炎症や障害をもたらすことは知られていましたが、今回の研究は「腸内細菌が肝臓への攻撃を助長する」という新たな仕組みを突き止めました。

アルコールを長期的に摂取すると腸のバリア機能が弱まり、細菌が肝臓へ移行しやすくなります。その結果、炎症や組織の損傷が繰り返され、病状が悪化していく“悪循環”が形成されるのです。

ヒト生検とマウス実験で得られた証拠

研究チームは、アルコール関連疾患を持つ患者から採取した肝臓生検と、アルコールを与えたマウスモデルの両方を調査しました。その結果、腸内細菌が肝臓に到達すると免疫応答が過剰に活性化し、組織破壊につながることが確認されました。

これにより、アルコールによる肝疾患は単なる「臓器のダメージ」ではなく、腸内細菌と免疫の複雑な相互作用が深く関わっていることが裏付けられました。

mAChR4と新たな治療の可能性

注目すべきは、研究の中で発見された「mAChR4」と呼ばれる受容体の働きです。この分子は腸内での抗菌免疫を強化し、細菌の肝臓への侵入を抑える役割を果たしていました。

mAChR4を介した免疫経路を活性化することで、アルコール性肝疾患の進行を抑えられる可能性が示されており、将来的な治療法の開発に直結する重要な成果といえます。

世界的な公衆衛生課題への影響

アルコール関連の肝疾患は世界中で増加傾向にあり、特に若年層を含む幅広い世代にとって深刻な健康リスクとなっています。今回の研究で明らかになった腸と肝臓の「腸-肝相関」は、予防策や治療薬の設計において重要な手がかりとなります。

飲酒習慣が日常化している現代社会において、この発見は「どれだけの量を飲むか」だけでなく、「腸と肝臓をどう守るか」という新たな視点を提供しています。

mAChR4 suppresses liver disease via GAP-induced antimicrobial immunity | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-025-09395-z

mAChR4 Boosts Liver Health Through GAP Immunity
https://scienmag.com/machr4-boosts-liver-health-through-gap-immunity/

Vicious Cycle Revealed: How Alcohol Helps Gut Bacteria Attack Your Liver : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/vicious-cycle-revealed-how-alcohol-helps-gut-bacteria-attack-your-liver

Alcohol Opens the Floodgates for Bad Bacteria
https://today.ucsd.edu/story/alcohol-opens-the-floodgates-for-bad-bacteria

文=WEBOPI(翻訳|構成|編集)


おすすめの記事